珍道中日記「30歳の若手杜氏が造る酒」

■ 30歳の若手杜氏が造る酒 ■

製造蔵の入り口にある事務所。 築160年という母屋は、神奈川県の建築百選に登録されている。 今回ご紹介させていただくのは、神奈川県相模原市(元津久井町)で酒造りをおこなう久保田酒造さん。約10年前に先代の蔵元が急逝され、サラリーマンであった久保田晃氏が後継者となった。当時若干20歳、学生の時は画家志望だったとか。
  久保田酒造の後継者、久保田晃専務。麹室にて撮影。

約8年間、谷藤杜氏(南部)さんの元で酒造りを学ぶことができたが、平成18年に頼りの杜氏が定年退職された・・・。翌年から自分の手で酒造りを行うことが強いられた。頼りになるのは弟の久保田徹さんだ。

 

 

検査室で、経過表をもとに今年の酒造りを説明してくれた。

今回、おじゃまさせていただいたのは3月15日。製造蔵の中にある検査室に入るやいなや・・・・。

「あたたかいですね。」というのが挨拶代わりだった。

 

まだ、上槽していない醪が3本あるので、春を向かえ気温の上昇が気になるらしい・・・。

実は、今回の蔵元訪問を申し入れたのは、酒造りの最盛期をむかえる1月下旬のことだった。人手が足りないことは承知していたので「製造風景を見せていただくだけで結構なので」と連絡をしたところ。

「難しい」という返事が返ってきた。

酒造りの最盛期を迎えるこの時期には、作業が多忙なこと、衛生面、安全面の問題で、一般消費者の見学者を受け入れない事が多い。

かつて酒造りの研修を一緒に受けた源さんが、今年から手伝ってくれている。 すでに日本酒の仕込みは終わり、当日は粕取り焼酎を仕込んでいた。

しかし、自社の酒を販売する流通業者を受け入れないというのは少ない。むしろ製品をアピールする絶好のチャンスとして、多くの製造者が歓迎してくれる。

なにやら予想外な展開だったが、なぜか職人気質的なものを、やりとりの中で感じた。

粕取り焼酎は、酒粕を再発酵させた醪を蒸留する。

 

検査室に入ると、醪の経過表をもとに今期の酒造りの説明してくれた。

約30日におよぶ醪の温度、アルコール、酸度、日本酒度などを、毎日分析してグラフ化していく。さらに新聞紙半面程度の大きな用紙の余白には、ぎっしりと醪の状態を観察したメモが書かれていた。

うわぁーすげー、大吟醸の経過表?と尋ねると、すべての醪の経過を記入しているという!(絶句)

麹をつくる箱は、最近新調されたもの。

 

 

 

また浸漬時間を記入したレポートには、米の水分量、外気温、水温、湿度、浸漬時間など。もちろんトップシークレット情報だ。

うむむむむ・・・。なみたいていの作業ではない!!

そして、自分の理想とする酒はこのような曲線で「今年はその精度を高めている。」と楽しそうに説明してくれた。まさに設計図そのものだ、本当に素晴らしい!

 

薄暗い部屋に、仕込みタンクが並んでいる。

 

 

コチラは、槽(ふね)とよばれる圧搾機。

今年30歳になるという久保田晃氏。酒造りをすべて行うようになってから、2期目の醸造がまもなく終わろうとしている。

若さに任せてがむしゃらという姿勢は感じられない。自分の好きなことに没頭しているという感じだ。飾り気のない素朴な人柄の中に熱いものを感じる。

 

中央が久保田晃専務、左が弟の久保田徹さん、右が源さん。

その、ひたむきな姿勢が酒質にあらわれている。

そして、できあがった酒は、2期目とは思えないほど完成度が高い。

     
 
このページで紹介した相模灘 山田錦50純米吟醸特別純米しぼりたて生原酒純米吟醸あらばしり